減価償却費という不思議な科目

会計の勘定科目の中でも、減価償却費は少し不思議な存在です。

経費として計上されるのは「今」なのに、その代金を支払ったのは何年も前かもしれません。

たとえば、事業に使う機械を500万円で購入したとします。

購入した年に500万円の現金は出ていきますが、原則として、その全額が購入した年の経費になるわけではありません。機械を5年間使うのであれば、その取得価額を何年かに分けて経費にしていきます。

これが減価償却です。

つまり、減価償却費とは、

「過去に支払ったお金を、今の経費として少しずつ計上しているもの」

と表現することができます。

お金が出ていかないのに、経費になる

通常、経費というと、その年にお金を支払うイメージがあります。

家賃を払えば地代家賃、電気代を払えば水道光熱費、従業員に給料を払えば給与になります。

ところが減価償却費は、その年にお金を支払わなくても計上されます。現金の支出は、資産を購入した時点ですでに終わっているからです。

そのため、減価償却費を計上すると利益は減りますが、その金額だけ現金が減るわけではありません。

仮に利益が500万円、減価償却費が100万円ある会社であれば、会計上の利益は500万円でも、単純に考えれば、事業から生み出された資金はそれより100万円多い可能性があります。

このように、支出を伴わない減価償却費が利益を圧縮し、税負担を抑えることで、結果として会社の手元に資金が残りやすくなることを、減価償却の「自己金融効果」と呼ぶことがあります。

減価償却費は、会社が自由に使えるお金なのか

ただし、減価償却費の分だけ会社が得をした、というわけではありません。

そのお金は、以前に機械や車、建物などを購入するために支払ったものです。

この購入の際に銀行から借り入れを行っている場合、銀行には毎月元本と利息を払っていくことになりますが、利息は費用になる一方で元本の返済は負債の減少であり、費用とすることができません。

つまり、

借入金の支払は、現金は減るが経費にならず、減価償却費は、現金は減らないが経費になる、という相対する関係になります。

借入金により設備投資をした場合、自己金融効果は借入金減少分を差っ引いて考える必要があります。

また、そのうえで自己金融効果があったとしても、減価償却によって手元に残った資金は、見方を変えれば、将来その資産を買い替えるために少しずつ回収している資金でもあります。

500万円で買った機械が古くなり、数年後に再び500万円の機械を購入しなければならないのであれば、減価償却費として計上されている間に、次の設備投資に備えて資金を蓄えておく必要があります。

減価償却費があるからといって、その分をすべて使ってよいとは限りません。

利益には含まれていないけれど、将来の設備更新のために残しておくべきお金。

減価償却費には、そのような性格もあります。

資産に支払っている「給与」と考えることもできる

私は、減価償却費を、その資産に支払っている給与のようなものだと考えることがあります。

機械や車は、人間の代わりに働き、売上を生み出します。

工場の機械は製品を作り、営業車は取引先への移動を支え、パソコンは事務作業を処理します。

従業員が働いた分について給与を支払うように、資産がその年に働いた分について、取得価額の一部を経費として計上する。

そう考えると、減価償却費は「資産がその年に働いたことに対する給与」のようにも見えます。

もちろん、実際に資産へ給与を支払っているわけではありません。あくまでも、過去に支払った取得価額を使用期間に配分しているものです。

それでも、減価償却という仕組みを感覚的に理解するには、捉え方の一つとしていいものではないでしょうか。

まぁ、この考え方で行くと、減価償却可能額がなくなった、つまり法定耐用年数が経過した後も使っている資産はただ働きさせてるようなものですが(笑)

利益とお金が一致しない理由

経営者の方から、

「利益は出ているのに、なぜお金がないのか」

あるいは、

「利益は少ないのに、なぜお金が残っているのか」

という質問を受けることがあります。

この利益とお金のズレを生む代表的な科目の一つが、減価償却費です。

資産を購入した年には、多額のお金が出ていく一方で、経費になるのはその一部だけです。そのため、利益は出ていても現金がない、という状態が起こります。

反対に、その後の年は、現金の支出がないまま減価償却費が計上されます。そのため、利益は少なくても現金は残っている、という状態が起こります。

損益計算書上の利益だけを見ていても、会社のお金の動きは完全には分かりません。

お金の動き、キャッシュフローは貸借対照表と損益計算書、双方を横断的に見ないと浮かび上がってこないものであり、

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を企業の経営状態を表す財務三表と呼ぶこともあります。

特に設備投資の多い会社では、利益に減価償却費を加えた金額や、借入金の返済額、今後の設備更新に必要な資金まで含めて見ることが重要です。

減価償却費は、過去と現在と未来をつなぐ科目

減価償却費は、今の経費でありながら、支払ったのは過去です。

現在の利益を減らしながら、その年に現金が出ていくわけではないため、手元資金を残す効果があります。

一方で、その資金は、将来の設備更新に備えるためのものとも考えられます。

過去に行った設備投資を現在の経費に配分し、未来の買替資金にもつながっていく。

そう考えると、減価償却費は、過去・現在・未来をつなぐ科目だといえるかもしれません。

単に税金を減らすための経費として見るだけでは、減価償却の本当の姿は分かりません。

会社がどれだけ資産を使い、その資産からどれだけ利益と資金を生み出し、次の投資にどれだけ備えられているのか。

減価償却費や固定資産をどうとらえるかというのは人によって色々な解釈ができます。

だからこそお客様に説明するときにどうしても熱を帯びてしまう。減価償却費は、会社の経営を考えるうえで、非常に奥深く、面白い勘定科目なのです。

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澤村
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